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夜の伏見稲荷大社の荘厳さと魅力、おすすめ観光方法

私たち日本人にとって、「お稲荷さん」はなじみ深い神社です。日本国内におよそ30,000社があるといわれています。その総本宮が今回ご紹介する伏見稲荷大社です。現在、伏見稲荷大社は、日本だけではなく、外国からの観光客にも大人気のスポットとなっています。

そんな世界に名をとどろかせている伏見稲荷大社の知る人ぞ知る穴場の時間帯をご紹介したいと思います。それは、なんと夕暮れ時から朝方までのいわゆるよるといわれる時間帯の伏見稲荷大社の夜の荘厳さと魅力、おすすめの観光方法をご紹介したいと思います。

24時間参拝できる伏見稲荷大社

 

伏見稲荷大社の御祭神が稲荷山に鎮座され、平成23年には1,300年になりました。そんな長きにわたって、人々の信仰の拠り所として多くのご利益を賜ってきた証といえるのではないでしょうか…。そのご利益も五穀豊穣、商売繁昌、家内安全、諸願成就とあらゆる祈りを網羅しているといっても過言ではありません。

そんな伏見稲荷大社では、24時間参拝することが可能だということはご存知でしたか?日中はもちろん、夜間も夜通し電灯が灯っているため、参拝することが可能です。御祈祷の受付やお守りなどの購入は16:00までとなっているので、ご祈祷やお守り、絵馬をお求めの方は、お早めにお出かけください。

夜の稲荷大社への拝観料とアクセス

拝観料は終日無料となっているので、気兼ねなく参拝することができます。車でおいでの方は、伏見稲荷大社鳥居の右隣に200台収容の駐車スペースが24時間、無料で開放されているので、そちらを利用するとよいでしょう。

電車利用の際は京阪本線の伏見稲荷駅とJR奈良線の稲荷駅ともに、朝は5:00台から、24:00台まで運行されています。バス利用では、京都市営バス「南5号・竹田駅東口(稲荷大社経由)行き・京都駅行き」京都駅ー伏見稲荷大社の間を朝6:00台から21:00台まで運航しています。

それぞれ訪れたい時間帯などに合わせて、利用されるとよいと思います。

夜の伏見稲荷大社の荘厳さと魅力

楼門

日が沈み、昼間の喧騒が夢の様に出店の影も形もなくなった通りを眺めつつ、天が漆黒に染まった街並みに大きな赤い鳥居と神社名石碑がライトに浮かび上がっています。入口からすでに光に浮かび上がる楼門が真正面にそびえたっているのを見ることができます。

光景は荘厳の一言です。ライトに照らされた参道を歩き、2本目の鳥を抜けると楼門です。天正17年(1589年)豊臣秀吉の母親の病を治してくれたお礼に造営されたと言われ、“命乞いの願文”が伝わっています。言伝えと造営については疑問する声もありました。

しかし、昭和48年の楼門解体修理の折、願文の年次と同じ「天正17年」の墨書が発見され、整合性は証明されました。神社の楼門としては規模の大きいものとなっています。秀吉の感謝の念が大きな楼門を作らせたのではないでしょうか…。

静かに流れる水音が聞こえてきます。日中とは違い水音も大きく響いて聞こえます。そんな水音を聞いていると、心が穏やかになってくると思います。その水音は楼門前にある石段の左側に手水舎から聞こえてきます。夜といえども礼儀を欠かしてはいけません。厳粛な気持ちで、体を清めてください。

楼門には人間と同じサイズの随身(ずいしん)像が座っています。平安時代の衣装を身に着け、弓と矢筒を持っています。平安時代の警備兵の衣装を着ていることから、伏見稲荷大社を守護しています。口を閉じ、年若く赤い衣装を着た「右大臣」と口を開き年嵩の黒い衣装を着た「左大臣」がいます。

随身像は電灯の光が届きにくいため、よく観察されたい方は、再度お日様の輝いている時間帯に参拝してみてください。

外拝殿(重要文化財2014年1月27日指定)

楼門の先に見えるのが、外拝殿(げはいでん)です。舞殿とも呼ばれ、平安時代の稲荷祭に使われた神輿を飾ったところです。いま目にしている外拝殿は戸時代末期にあたる1840年に建てられたものです。正面5間(横幅9m)、梁間3間(奥行5.5m)の広さがある入母屋造の建築様式で檜皮葺で作られた豪華な拝殿です。

夜の伏見大社を訪れた時に見ていただきたいのが、外拝殿の軒下に吊り下げられている燈籠です。「吊り灯籠の黄道12星座」と呼ばれ、明治時代に奉納されたものです。12の燈籠は「黄道十二星座」を表しており、12の星座を象徴する燈籠の絵柄に明かりが灯り、その美しさを堪能することができます。

日中では見逃しがちな燈籠も夜の伏見稲荷に花を添えています。外拝殿は2月に行われる節分祭では豆をまく舞台となり、稲荷祭りのときは外拝殿前に神輿が並んだ姿を見ることができます。

本殿(重要文化財1909年4月5日指定)

本殿は稲荷造りとも呼ばれる五間社流造(ごけんしゃ ながれづくり)の様式で作られています。本殿の大屋根が階段部までを覆うように作られる向拝(こうはい)でつかられているため、横から見ると屋根の片側が間延びしたように見えます。

装飾の“懸魚”の金覆輪や“垂木鼻”の飾金具、前拝に付けられた“蟇股”等は美しく夜の暗闇の中にさす淡い伝統の明かりがその美しさを際立たせています。唐破風の向拝はその極彩色も美しく、日の光で見るのと違って、深みが加わっているように見える気がします。

玉山稲荷社

本殿左奥にある神様の仮住まいともいえる権殿(かりどの)の横に石段があります。その石段を登ると玉山稲荷社などの末社があります。玉山稲荷社の右奥には伏見稲荷大社の奥宮があります。奥宮の左は白狐を祭る唯一の神社である白狐社があります。奥宮正面あたりには神馬舎があり、白い馬の像が祀られています。

鳥居参道から千本鳥居

最初に鳥居参道を抜けると、いよいよ千本鳥居が連なります。鳥居内は燈籠の明かりによってほの明るく、燈籠の明かりが届かなくなりそうになると、先にある燈籠の明かりが進先を照らしてくれます。一転、鳥居の外側に目を向けると、漆黒の闇がのぞきます。

まるで、朱に彩られたトンネルを歩いているかのようです。昼間には見えている木々でさえ、形をひそめ、漆黒の闇に溶け込んでしまっています。お社があるあたりとは、趣が異なります。漆黒の闇と朱の鳥居を光らせる燈籠の明かりが、幽玄の世界に誘います。

日常からかけ離れた空間に身を置く、不安定さがその神秘性を際立たせてくれます。人の心が作り出す幻想があなたの心を蝕もうとするかもしれません。幻想を打ち破り、心の平静を得ることができると、神と対話できるかもしれませんね。

奥社奉拝所

千本鳥居を抜けると手水舎があり、奥社奉拝所あります。幻想の世界から呼び戻してくれる場所にもなりそうに、明るさがあります。稲荷山を遥拝する場所で、社殿の後ろには稲荷山三ヶ峰があります。社殿の後ろには、奉納された小さな鳥居が祀られてある鳥居が立っています。

こちらには、狐の顔の絵馬がたくさんかけられています。狐の顔の部分が白塗りになっているため、なんだか目立っています。顔のパーツは絵馬を購入した人が描いているので、様々な顔の狐さんがぶら下がっています。なかなか、見ごたえがあります。

余裕がある方は、ここに「おもかる石」があります。おもかる石は、石燈篭の空輪(頭の丸い石)のことを言い、燈籠の前で願い事をし、空輪を持ち上げた時に感じる重さが予想より軽ければ願い事が叶い、
重ければ叶わないといわれているものです。ここで、Uターンするもよし、先に進むのもよしです。

奥社から鳥居参道へ

最初の鳥居参道や千本鳥居よりも、燈籠の感覚が遠い様に感じる鳥居の間を抜けていきます。進む先に完全な闇が所々に現れます。オブジェとなった根上がり(値上り)松を眺めながら、先に進みます。

熊鷹社

熊鷹神社に向かう途中に千本鳥を上から眺められるスポットがあります。幻想的に漆黒に浮かぶ光を受けた鳥居が朱色に輝いています。まるで、異世界に誘っているかのような神秘的な光景を眺めることができます。乱立する朱や石造りの鳥居が光を浴びて、美しく感じられます。

また、朱色の玉垣の向こうに緑の山影を映す池があります。新池、谺ケ池(こだまがいけ)と呼ばれ、所在不明者の居所を探す者が池に向かって柏手をうち、こだまが返って来ると児玉が聞こえた方向に手がかりが見つかるといういわれがあります。その池の先には霊峰、稲荷山がそびえています。

稲荷山は、東山三十六峰の最南端にあり、三つの峰(三ケ峰)が東から西へと天空から降り立つ階段のように見えることから、まさに神様が降り立った地に見えます。天に近いところから一ノ峰・二ノ峰・間ノ峰・三ノ峰と呼ばれ、山中には、塚が群在し、数千もの朱の鳥居が建ち並ぶ様は圧巻です。

それらを参拝することを「お山する」と呼んでいます。

夜景

熊鷹社を先にに進むと三ツ辻にあたり、そこを右手に折れ、四ツ辻を右手に曲がると三ノ峰・間ノ峰・二ノ峰・一ノ峰と続きます。その先に御膳谷奉拝所があります。御膳谷奉拝所から北に200m下ると清瀧があります。静謐な空間に清水の流れる音が響き渡り、心身の穢れが取り払われるような気がします。

参道に戻り、下ると四ツ辻に戻ります。右手にある御幸奉拝所から下ると、荒神峰(田中社神蹟)があります。足元に気を付けながら神蹟の後方にまわると京都市内の中心部から北の景色を見ることができます。町の光に輝く京都の美しい夜景を堪能することができます。

稲荷山十二境図詩に出てくる「孤巒返景色」はこのあたりの眺めをいうのではないかと言われています。
夜の伏見稲荷大社参拝の締めくくりとして、美しい京都の夜景を胸に刻み込んでください。

参拝にかかる時間

本殿や千本鳥居をサクサクと参拝したいという場合は、30分程を目安にしるとよいと思います。また、本殿や千本鳥居はもちろん、稲荷山のすべてをご覧になりたいという方は、2時間ほどかかるかと思います。夜道でもあり、足元に気を付けて歩かなければいけないので、多めの時間を見たほうが良いかもしれません。

本宮祭(もとみやさい)

全国津々浦々にある「お稲荷様」の崇敬者が総本宮の伏見稲荷大社に参拝して、感謝の気持ちを表す大祭です。7月の土用入りの後にくる初日曜日か初祝日の最初に来る日が本宮祭の日となり、その前日が宵宮祭(よいみやさい)となります。

本宮祭と宵宮祭には稲荷駅の前にある参道、本殿、千本鳥居、果ては露店まで、いたるところに提灯が吊るされるのです。宵宮祭には全国へ散らばっていた神様たちが帰省されると言われています。そこで、神様が迷わない様にたくさんの提灯を吊るし、暗い道を明るく照らしてあげるのです。

18時になると万灯神事が行われ、神職によって燈籠に明かりが灯されます。あまたある石灯籠と提灯が柔らかな光を放ちます。外拝殿とその周りには京都近郊の日本画家から奉納された400点以上の行灯画が飾られ、何とも言えない美しい光景を見ることができます。

楼門から本殿へと続く参道にもたくさんの行灯が並び、この世とは思えぬ幽玄な光景が広がります。提灯や石灯籠の淡い光が種の鳥居を幻想的に浮かび上がらせ、現世と幽界のはざまを言ったり来たりしているような気分にさせてくれます。

千本鳥居を歩くと一連に連なって見える提灯がさらに幻想の世界に誘います。朱の鳥居とその陰にできる闇のコントラストがこの世のものとは思えないほどの揺らめきの美しさを見ることができます。18時から入れられた明かりは、20時ころにはすべての提灯に明かりが灯ります。

1時間ほどした21時ころになると、明かりが消されていきます。正味1時間の幻想的な幽玄の世界をおとずれていただきたいと思います。

祭前であれば、提灯を奉納することができます。大きな楕円の提灯は10,000円、小さな丸い提灯は3,000円ですから、ぜひ、祭りの美しさに一つ提灯を添えてみるのもお勧めです。自分の名前が書かれた短冊の付いた提灯を探すのも、また一興ではありませんか?

まとめ

このように、普段の夜の伏見稲荷大社を参拝し、その静けさと建物の細部などを静かに楽しむこともできます。また、年に1度の本宮祭で、提灯や石灯籠の光に溢れた伏見稲荷大社を楽しむこともできます。どちらがお好みでしょうか?

深夜などに参拝される方は、足元が見えにくい箇所もあります。2人以上で、参拝されるとよいかもしれません。神聖な場所ですので、神様への敬意の念を忘れずに参拝していただきたいと思います。いつまでも、夜の自由参拝ができるように気配り心配りで参拝するとよいかもしれませんね。

そして、夜の幽玄な世界を多くの方に体験していただきたいと思います。