京都嵐山を観光で訪れた際に、渡月橋を渡らない人はいないのではないでしょうか。それぐらい有名な観光スポットで、映画やドラマ、CMや雑誌などで誰もが1度は目にしたことがあるでしょう。嵐山の景観と調和するように架かるこの橋の上から、ただ景色を眺めるだけでも十分楽しめますが、知っておくともっと楽しめる逸話と魅力をご紹介します。
渡月橋の歴史
渡月橋は大堰川(桂川)に架かる橋で、嵐山のシンボルのひとつとして一年中観光客で賑わっています。この橋は、平安時代初期に弘法大師の弟子である、法輪寺の道昌(どうしょう)が架けたことがはじまりとされています。当時は現在の位置よりも100mほど上流にあり、名称も「法輪寺橋」と付けられていたとの記録が残っています。ビジュアルも現在とは異なり、朱塗りの壮麗な橋だったそうです。
その後、応仁の乱で橋が落ちたり、出水で破損・流出したりを繰り返し、江戸時代初期に豪商角倉了以(すみのくらりょうい)が河川の改修工事を行い、現在の場所に架け替えました。橋脚の上に桁・梁をかける桁橋(けたばし)で、昭和の初めごろまでその形だったのですが、昭和7年の出水により橋の半分が流出し、全面的な改築が行われることとなりました。
こうして昭和9年に現在の渡月橋が完成しました。出水の際に破損・流出することが多かったので、基礎は鉄筋コンクリート造で頑丈に、しかし欄干は嵐山の景色と調和するように尾州檜が用いられています。
「渡月橋」の名の由来
わたる月の橋と書いて「渡月橋」。なんとも風雅な名称ですが、これは「法輪寺橋」が架けられてから400年あまりのち、亀山上皇が「くまなき月の渡るに似る」と言ったことからこの名が付けられました。月が橋を渡っているようにみえる、とはさすがやんごとなき身分の方はおっしゃることが美しいですね。ぜひ月が出ている夜に、その名にふさわしいかどうか確かめに行ってみてください。
法輪寺橋での悲恋
まだ渡月橋が法輪寺橋と呼ばれていたころ、この橋のたもとで建礼門院の雑仕(ぞうし)横笛が入水した、と『源平盛衰記』に書かれています。建礼門院とは平清盛の娘で、高倉天皇の中宮として安徳天皇を産んだ人です。横笛は身分の低い女だったのですが、平重盛の家臣と身分違いの恋に落ちます。ですが、やはり許されない仲だったので、悲しみのあまり入水してしまいました。
現在の嵐山は観光客が行き交う賑やかな場所ですが、はるか昔は人の少ないしみじみとした静かな場所であったので、そうした時代に思いを馳せてみるのもまた一興です。
渡月橋・嵐山・大堰川の風景
現在の渡月橋はコンクリート造ですが、風光明媚な嵐山の雰囲気と調和するようにつくられています。欄干は檜でつくられており木の温かみを感じるので、一見しただけではコンクリート造りとはわからないでしょう。渡月橋の上から眺める風景もいいですが、河原のほとりに立ち、渡月橋・嵐山・大堰川(桂川)を一度に目の中におさめるのもおすすめです。観光客で賑わう中にも、川のせせらぎと嵐山の自然と渡月橋の優雅な姿が心を穏やかに整えてくれます。
船の上から眺める
気候がよく川の流れが穏やかな時は、遊覧船に乗り、川の上からこの三位一体の風景をみることをおすすめします。元々、貴族の別荘地であった嵐山は、当時舟遊びも盛んに行われていたそうです。特に、桜の名所として『都名所図会』や和歌に詠まれてきたので、混雑覚悟で一生に1度は桜の時期に景色を堪能したいですね。
嵐山の屋形船
受付時間:9時~16時
電話番号:075-861-0302
営業日:年中無休(但し12/31・1/1は休業) 大雨・増水・強風の場合は欠航
HP:http://arashiyama-yakatabune.com/
嵐山花灯路
2005年からはじまった「嵐山花灯路」(あらしやまはなとうろ)は、京都の夜を演出する風物詩として、毎年12月に行われるイベントです。嵐山一帯の路や観光名所をLED電球の「灯り」といけばなの「花」で彩り、思わず歩きたくなってしまうような「路」を演出しています。
渡月橋周辺もライトアップされ、幻想的で美しい雰囲気に包まれます。普段とはまた違った渡月橋の魅力的な姿をみることができるイベントなので、これを目当てに旅行の日程を組んでみるのはいかかでしょうか。日程の詳細等はHPで確認することができます。(京都花灯路http://www.hanatouro.jp/index.html)
灯篭流し
毎年8月16日に、渡月橋のたもとから灯篭を流す「嵐山灯篭流し」が行われます。これは昭和24年に戦没者の霊を慰めるために始めたことに端を発し、お盆の最後に先祖を送る行事の1つとなっています。厳かな雰囲気が漂う中、大文字や鳥居の送り火を一緒に眺めることができるので、京都の夏の風習を一度に味わうことができます。
古来より変わらぬ魅力
渡月橋は、古来より嵐山のシンボルの1つとして在り続けてきました。その長い歴史の中には様々な逸話があり、それらを知ることによってさらに渡月橋の魅力が引き立ちます。渡月橋を訪れた際には、ぜひ色々な角度から眺めてみてくださいね。